新たなハラスメント増殖で、知らぬ間にアナタも加害者に?人事・労務担当者が教えるハラスメント回避術

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最近、ハリウッドや汐留方面でセクハラ被害者が続々と声を上げていますね。どちらの加害者も、職を追われ、地位も名誉も失いました。

あなたも他人事ではありません。セクハラはせずとも、気づかぬ間に「◯◯ハラスメント」をしており、家族を抱えて路頭に迷うことになるかも……。それはぜひ避けたいところですよね。

そこで、今回は、ハラスメント事情に詳しい方々を集めて座談会を開催。ハラスメントの最新事情と、その回避法を語ってもらいました。

ではスタート!

【参加者】
Aさん:労働問題も手がける弁護士(30代男性)
Bさん:上場企業の総務担当者(30代女性)
Cさん:数百人規模のITベンチャーの人事担当者(20代女性)
Dさん:転職エージェントに勤めるコンサルタント。若者や第二新卒に強い(30代男性)

新しいハラスメントが増殖中!?

司会:
今日はどうもありがとうございます。いきなりなんですけど、どうですか最近? みなさんの周囲でも「me too」とか言ってる人、増えました?

Bさん(上場企業の総務担当者):
さすがに、リアルに「me too」って言ってる日本人は見ないよ。「me too」ってセクハラの被害者が「自分も!(被害を受けた)」ってことでしょ。まぁ普通、日本語で声を上げたほうがはやいでしょ。

Cさん(数百人規模のITベンチャーの人事担当者):

ウチの会社は数百人いますけど、セクハラが表立って問題になったことはないですね。

セクハラって、ハラスメントのなかでも古典的じゃないですか。自分も含めた若者のなかでは「やっちゃいけないこと」とか「社会のルール」みたいな感じで既に確立されているというか。

むしろ、ウチで問題にならないように気をつけてるのは、“ジタハラ”と“オワハラ”です。

上場を見据えて適正な労働時間に改めようとしてるんですけど、そこで「早く帰れ」「帰れって言っても、仕事量同じで早く帰れるわけ無いだろ」っていうジタハラ(時短ハラスメント)が生まれそうなんです。

オワハラは、内定している学生に「就活を終えて、内定承諾を早く出せ」って迫るもので、組織が急拡大してて人手が足りないウチの会社で起こりそうで怖いんですよねー。これやると、就活生の掲示板「みん就」とかにボロクソに書かれて、来年以降の新卒採用に響いたりするので、マジで注意しないと。

なんかウチの会社、問題だらけみたいですけど、ただ、1社目に勤めていた歴史の古い中小企業のほうが、ハラスメントに対する意識はヤバかった気がします。

Dさん(転職エージェントに勤めるコンサルタント):
あー、それはありそうですね。

僕は仕事柄、20代の転職希望者とか、大学卒業後3年くらいのいわゆる「第二新卒」から転職に関する悩みを聞くことも多くて。転職のきっかけに、ハラスメント系の問題が絡んでることもあります。そして、業界とか、職種、創業年数や会社規模なんかによって、問題になっているハラスメントの性質に一定の傾向がありそうな気がしています。

Aさん(労働問題も手がける弁護士):
例えば具体的に?

Dさん(転職エージェントに勤めるコンサルタント):
ワンマン企業とか歴史の古い中小企業、いかにもオトコ社会って感じの業種に勤めている転職希望者がよく言ってるのは、やっぱりパワハラ・アルハラ・セクハラあたりですかね。

とはいえ、こういう古典的なハラスメントも時代によって変化してるみたいで。一応、「ハラスメントはよくない」ってことを経営陣も古参社員もぼんやりとわかってるんだけど、長年に渡って慣れ親しんだハラスメント思考は、根が深くて抜きがたいみたいです。

たとえば、僕の聞いたケースだと、古い体質のワンマン企業が、若手を採用するために社風を一新したいってことで、ベンチャー企業っぽいマネジメントをはじめたんですよ。”1on1″っていう、週1とか月数回、上長と部下が将来のキャリアや仕事の進め方について腹を割って話し合う個人面談があるんですけど、これを取り入れた。そしたら、上長が「生意気言ってんじゃねぇ」のノリで人格否定を連発。ウツになりそうで、悩んで転職を考えたっていう人がいました。1on1って1対1で個室でやることが多いんで、意識の低い会社だとセクハラの温床になるんじゃないかって気もしてます。

あと最近は、週末に会社でアルコールありの懇親会や勉強会を開くところもあるんです。ベンチャーや外資に多いですけど。“ビアバッシュ”とか“ピザパーティー”とか、呼び方はいろいろです。先の1on1を取り入れた会社は、このパーティーも導入して、結果、悲惨だったらしいですよ。本来は、軽く飲んだりしながらチームの結束を深めたり情報交換する目的なんですが、情実営業が得意な老舗営業会社のオッサンに「軽く飲んで」なんて概念はない。まだ仕事が終わってない社員に無理やり大量に飲ませたり、社長自ら泥酔して自宅に送迎させたり、大暴れだったみたいです。しかも、社長が泥酔したせいで、社長の決裁が必要な案件が滞って、休日出勤を強いられたって言ってましたね。

Bさん(上場企業の総務担当者):
すごい! アルハラとパワハラを兼ね備えたニュータイプのハラスメントが誕生したね。

Aさん(労働問題も手がける弁護士):
最近は、「ハラスメント」の種類が増えすぎですよね。正直、どこまで増えるのか……

まぁ、ほとんどのハラスメントは、権力のある者が行うケースが多いという意味で、少なからずパワハラ的要素を含んでいる気がします。なので、まずはパワハラの定義を押さえておくのがいいでしょうね。

厚生労働省はパワハラの定義を「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義して、6種類に分類してます。

で、パワハラの場合は、被害者なら労災認定を受けることができたり、加害者は刑事事件化すれば暴行罪や侮辱罪ということになるんですが……。

問題は、最近増殖してる新しいハラスメントですね。たとえば、”スメハラ”。同僚がタバコ臭いとか、香水が臭い、加齢臭がうんぬんとか。これ、法律的に解決するのは相当難しい。臭いかどうかは個人の感覚によるところが大きいし、体臭は一定程度なら誰でもするものなので、違法を立証するのはキツいです。他人の健康を明白に害してるとかで、ニオイとの因果関係を客観的に証明できれば、まぁなんとかなるかもしれないですけど。

ちなみに、”逆ハラ”っていうのも聞いたことがあります。上司が部下から村八分にされるような状態で、権力を持ってない者からのハラスメントということで、パワハラの逆バージョンです。事例によってはパワハラ同様に、民事での損害賠償や刑事事件化ができると思います。ただ、これって以前なら「職場内のいじめ」って名前だったと思うんですよね……。ほんと、”ハラスメント”というレッテルを貼って、お手軽に分類する風潮なんだなぁと感じます。

従来の古典的なハラスメントなら、あらかじめ社内でガイドラインを作ったりして対応することも可能だと思うんです。けど、新たなハラスメントが毎日生み出されているわけじゃないですか。法律的な解決とか、社内規則による予防とか、けっこう限界がある気がします。そこらへん、規模の大きいBさんの会社ではどう対策してます?

Bさん(上場企業の総務担当者):
大ざっぱにいうと、普通の社員は「何がハラスメントに当たるか」っていうのを、法律とか、役所の定義によって判断してるわけじゃないから。スメハラとか、感情的な問題もありそうだし。あとは、「なんとなく職場で疎外感を感じる」からはじまって、みんなに「◯◯ハラスメント」を受けてるって疑いだしたり。

もちろんガイドラインもあるけど、自分の属している部署やグループの同僚がどんな人かを把握して、空気を読むのが一番のハラスメント予防になると思う。つまり、周囲で働いてる人間がどんなことを嫌がるかを考えて、周囲にあわせるように気を使い合うっていう。当たり前といえば、当たり前だけど。

Dさん(転職エージェントに勤めるコンサルタント):
転職で、会社を変わったときなんかも要注意ですね。社風によって、何がハラスメントかの基準が異なるというか。

さっき紹介したような古い社風の会社では、けっこうキワドいセクハラまがいが横行してるけど、あまり問題になってる風じゃなかった。社風をムリに変えようとして、変えきれずに新たなハラスメントが誕生したりね(笑)。

転職エージェントの立場からのアドバイスとしては、転職先は、自分と同じ考えの人が多そうな会社にしとけってことです。人間って、けっこう社風に染まりやすい。朱に交われば赤くなるじゃないですけど。社員同士、知らないうちに同じ感覚や考え方になってる。だから、Bさんが言ってたみたいに、職場の仲間の空気を読むのが一番のハラスメント予防策だとしたら、似た社風の会社間で転職するのが一番ラクだと思います。

仕事の進め方的にも、ベンチャーと老舗企業じゃ全然違いますしね。ベンチャーは、社内のやり取りは全部Slack(グループチャット)とかで、そもそも社員同士がリアルに話す機会が少なかったりしますし。

どうすれば加害者・被害者にならない……?


司会:
ーー時間なんで、ここらで締めたいんですけども。聞いてると、業種や業界によって、日々、新たなハラスメントが生まれてるみたいですね。これ、「自覚がないのにハラスメント加害者として糾弾されて、クビ」みたいな状況になりそうで怖いですよ。

気になるのは、どうしたら「加害者」とか「被害者」にならないで済むかなんですけど。みなさん、それぞれの立場から、なんかアドバイスを。

Cさん(数百人規模のITベンチャーの人事担当者):
老舗企業とベンチャー企業、両極端の会社で働いてみて感じたのは、ハラスメントも含めて、社会のルールは時代とともに変わるってことです。昔の「飲みニケーション」がアルハラに変わるとか。

だから、新しい情報に興味がなくなったらヤバいんじゃないですか。大学生がどんな日常生活をしてるかとか。私は人事なんで、採用候補者のSNSに張り付いてますけどね。

Dさん(転職エージェントに勤めるコンサルタント):
ハラスメントって、モノによっては「事件」になるだろうから、外から軽々しく言えないですが、やっぱり「社風」っていうのはあります。

ハラスメントを受けていると悩んでいる人は、現職と全く違う業界なんかに転職するのも手かもしれない、とは思いますね。

Aさん(労働問題も手がける弁護士):
じつは、今後は「加害者」の濡れ衣を着せられた人が法律家を頼る、というケースが増えそうな気がしています。というのも、ハラスメントの定義が拡散しすぎているので、ハラスメントのレッテルを貼れば、気に入らない相手を簡単に陥れることもできますからね。ライバルの出世を阻むとか。

そういう気配を感じたら、社内の労務に相談する方法もありますけど、確実なのは社外の法律家に相談することです。「法テラス」など、比較的敷居の低い相談窓口もあるので、ぜひ。

Bさん(上場企業の総務担当者):
上場企業はコンプライアンスが厳しいからハラスメントがないかと言えば、そんなことない。さっきも言ったけど、既成のガイドラインで予防できることは少なくて。究極、「空気の読み合い」「気の使いあい」という部分は大きいと思います。

さいごに

じつにいろんなハラスメントがあるものですが、たしかに「気の使いあい」が有効な対策のようです。皆さんが上手に空気を読んで、ハラスメントの加害者にも被害者にもならないことを祈っております。

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