【ご当地別】相手の心をくすぐる「ヨイショ術」旅行雑誌記者のワザを公開

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異動や転勤が多い4月、新たな環境で仕事をはじめる人も多いはず。嫌な上司や面倒な得意先から解放されるメリットもある反面、人間関係をゼロから構築しなければならない煩わしさにアタマを抱えているといったところでしょうか。本当は大して仲良くなりたいわけでもない上司や顧客とは、できるだけ手間をかけずに、定型的な処理で人間関係を構築したいのが人情ですよね。

そんなあなたにオススメな「鉄板」の人間関係構築術が「出身地」や「ご当地」に対するヨイショです。郷土やご当地をホメられてイヤな気持ちになる人間など、そうはいないはず。それに、東京外国語大学の研究「ほめの諸相」でも、親しい関係ではない人や初見の人など、個人的な事柄についてホメることができない相手に対応するための定番の方法として「出身地」のヨイショが取り上げられています。なんと研究者のお墨つき!「出身地」「ご当地」についての知識は、サラリーマンの必須科目なのです。

とはいえ、「出身地」「ご当地」のネタは使い方次第で毒にも薬にもなります。何気ないひと言でご当地に関心がないことがバレてしまったり、さらには逆鱗に触れることも。

そこで、今回、旅行誌で記者経験のある筆者が、記者仲間とともに、使える「出身地」「ご当地」ネタを精選。さらには全県民共通のヨイショの鉄則や、ネタ収集の手段まで大公開します。

全ケンミン共通、ヨイショの鉄則

具体的なご当地ネタを披露する前に、まず、相手が何県民であっても、都民でも府民でも道民相手でも、とにかく守らなければならない鉄則があります。

鉄則1:テレビの情報はウソと思え!

初心者が陥りがちなミスとして、テレビなどで紹介されていた“〇〇県で流行っているもの”“〇〇市独特の食文化”といった情報を鵜呑みにしてしまう傾向があります。

ここ数年、“ケンミン”独自の風習を取り上げるバラエティー番組が放映されています。また、東北地方の海女がアイドルに……、という筋書きのドラマが大ヒットを飛ばし、“じぇじぇじぇ”という方言が注目されたのも記憶に新しいところです。が、このような情報を信じてそのままご当地で話をしてしまうと、痛い目を見ることになります。

というのも、上述のケンミン紹介バラエティーは長寿番組となってネタが枯渇してきたのか、近年、ご当地でもごく一部でしか通用しない話題を、さも当たり前のように取り上げる傾向が。じつは、現地でも「テレビを見てはじめて知った」「そんな食いモンきいたことねぇよ」なんて話題になっているのです。また、筆者が実際に経験して忘れられないのが、ドラマの舞台になった地域の漁師から聞いた「じぇじぇじぇ、なんて誰も言わねぇし、聞いたこともねぇよ」という言葉。実際に現場に行ってみることの重要性を痛感したものです。

というわけでこのミス、定番ながらも、やってしまうと「コイツぜんぜんわかってないな……」と情報収集能力を疑われたり、仕事ができない人いうレッテルを貼られたりして、大ダメージになりがち。注意が必要です。

鉄則2:決めつけるな!

次なる鉄則は、「全国的に流布している定番のイメージで県民性を決めつけるな」ということ。

胸に手を当ててください。あなたも「京都人って、お茶漬けを出して帰らせるんでしょ?」とか「高知出身なの? お酒飲めそうだもんね」あるいは「名古屋? 味噌カツね」「大阪? でんがなまんがなやで〜」なんて、偏見に近い決めつけを無意識にしているんじゃないでしょうか。

県民は、ことあるごとに各県定番のイメージのレッテル貼りの被害に遭っており、定番情報に食傷気味です。とくに、名物の食べ物や土地の人の気風に関する話題は偏見混じりのことも多く、その話題を振ると明らかにムッとしたような表情になる人もいます。高知県のなかにもお酒を飲めない人はいるし、日本人のほとんどは空手家じゃないし、サンバを踊れない内気なブラジル人だっているのです。

「ヨイショしようというときに、ネガティブなことなんて言わないよ」と思うかもしれません。しかし、意識の底に思い込みや決めつけがあると、ふとした瞬間に口を滑らせることも。スムーズにヨイショを成功させたいなら、決めつけを意識的に排除するよう心がけましょう。

鉄則3:詳しくなりすぎるな!

ヨイショは、相手に対するサービスです。相手に気持ちよく「お国自慢」をしてもらうことが、成功への近道です。

ありがちなのが、頑張ってご当地情報を仕入れたからと、ヨイショする側が一人でしゃべりすぎてしまうという失敗。長々と話したところで、どう頑張っても現地の人に勝てるワケがないうえ、間違った情報でボロが出るかもしれません。何のメリットもないのでやめましょう。

ヨイショしたい相手に話してもらうには、「ご出身地は〇〇が有名だそうですね。〇〇について教えてください」とお願いしてしまうこと。知識の仕入れに時間もかからず、相手も喜んで話してくれるのでオススメの方法です。

鉄則4:日本地図をアタマに焼きつけろ! できれば江戸時代までさかのぼって。

最後の鉄則は、日本地図を覚えることです。「バカにするな!」という声が聞こえそうですね。そこで質問です。「広島と岡山、東京から見て、より西に位置するのはどちらでしょう?」。質問2「山梨はいくつの県と県境を接しているでしょう?」。

縁がない県の位置なんて意外に理解していないものです。ご当地ヨイショを実行するなら、突っ込んだ話になっても慌てずに済むよう、日本地図くらい勉強しておきましょう。小学生くらいのお子さんがいるなら、社会科の地図帳で一緒に勉強してあげるのはどうでしょう? 子どもに勉強を教えているという姿を見せれば、奥さんからの評価もアップするんじゃないでしょうか。

県の位置に加えて、覚えておくと便利なのが“その地域は、江戸時代に何藩だったか”。たとえば、青森県では日本海側の津軽地方は弘前藩の領地で、太平洋側の八戸などは南部藩の所属でした。両地域は気候や風土が違うのはもちろん、食文化や人々の気風も、微妙に異なる印象があります。現地の人の会話で「ここは旧南部だから」といったような言葉も、ごく普通に飛び出します。旧藩を気にする地域は多いのです。もし余裕があれば、江戸時代に同じ地域として扱われていたか、という視点も身につけてみるとよいかもしれません。

ケンミン感涙、各県のご当地ネタの例


さて、いよいよ具体的な、県別のご当地ネタをご紹介します。全てをこの記事で挙げることは絶対ムリなので、各県1〜2個ほど、できるだけ県内の広い地域で通用しそうな話題や、ポジティブな話題を選んでいます。

北海道:小中学校の定番行事は「炊事遠足」。
青森:津軽地方には「米の漬物」が存在する。
岩手:人口5万人の日本最大の村「滝沢村」が存在した(2014年、市に移行)。
宮城:「牛タン」が流行ったのはここ20〜30年くらいの間。存在をテレビで知った年配者もいるほど。
秋田:「なまはげ」は集落によって色もカタチも異なる。後継者不足で絶滅寸前。
山形:「中華麺」の消費量が日本一。「芋煮」の味付け(醤油or味噌)で地域間の争いが深刻。
福島:名古屋以外ではめずらしい「冷やし中華にマヨネーズ」文化。
茨城:水戸市が「納豆消費量日本一」を2017年に奪還。前年1位は盛岡市。
栃木:「しもつかれ」という郷土料理が存在。郷土料理なのに苦手な県民が多数。
群馬:「鶴舞うかたちの〜」のフリに続けて、下の句を言える県民が多い。「味噌」文化。
埼玉:自治体や公共団体の「ゆるキャラ」が大増殖し、80体に迫る勢い。
千葉:大きな山はないが、養老「渓谷」はある。東京への「行商専用列車」が存在していた。
東京:下町育ちの年配は「ひ」「し」を区別して発音できない。
神奈川:「湘南」と「横浜」「三浦」のエリア分けは厳密に。それぞれにプライドがある。
山梨:じつは「アワビ」の消費量が多い。
新潟:雪が積もるのを防ぐべく、「信号機」がタテ。ご当地「ラーメン」の多さは有数。
長野:「蜂の子」など、伝統の昆虫食はすでに馴染みのない家が多い。観光客が買っていく。
富山:出身地域を聞くときは「呉東」と「呉西」のどこかを聞くと喜ぶ。
石川:なぜか「ソフトクリーム」の種類が充実。
福井:「竹田の油揚げ」は、県外から買いに来る客で行列
岐阜:「モーニング」「鶏ちゃん」など、名古屋文化の代表と思われているもので岐阜発祥のもの多数。
静岡:ハンバーグ店は「さわやか」一強。スーパーに「イルカ肉」を売っていることも。駿河湾は「深海魚」の漁場。
愛知:「派手好み」。「外国語」習得にかける費用が全国でも上位。
三重:「天むす」の元祖は三重県。
滋賀:電柱の影に「飛び出し坊や」の看板が潜み、飛び出し注意を喚起する。
京都:「日本酒で乾杯」することを府の条例で定めている。
大阪:「肉まん」ではなく「豚まん」。
兵庫:「日直」を日番という。
奈良:橿原市から和歌山県新宮市を走るのが「日本一長距離の路線バス」。停留所数は160を超え、休憩を挟んで運行。
和歌山:和歌山にも「パンダ」がいる。
鳥取:「ばばあ」という魚が捕れる。「銀行の密度」が全国有数。
島根:他県の「神無月」を、島根では「神在月」という。出雲大社に神が集うため。
岡山:「IH調理器具」の普及率が高い。21から先の数え方は「にーいち」「にーにー」
広島:「広島風お好み焼き」と呼んではいけない。お好み焼きは広島のもの。
山口:萩の旧家には高確率で「夏みかん」が植えてある。
徳島:「電車」はないが「汽車」はある。
香川:夏季は「渇水」。「丸亀製麺」は香川の丸亀市とは何の関係もない。
愛媛:松山空港では「蛇口をひねるとポンジュース」の都市伝説を、イベントとして定期開催。
高知:「ランチパスポート」は高知の出版社が開発したビジネスモデル。
福岡:「うどん」がやわらかい。「焼き鳥屋」の密度が高い。
佐賀:12チャンネル全ての「テレビ局」が受信できる地域も。無毒化養殖された「フグの肝」を提供可能な特区の設置を検討中。
長崎:トルコと無関係な「トルコライス」が存在。「墓の文字」が金色。
熊本:「外食できる店舗」の数が全国平均より少ない。
大分:人口あたりの「パチスロ」台数が全国平均より多い。「かぼす」の産地。「すだち」と間違えてはいけない。
宮崎:「サボテンステーキ」なる食べ物がある。
鹿児島:焼酎のイメージ通り、数十年に渡り「日本酒」の蔵元は存在しなかったが、近年日本酒作りが復活。
沖縄:泡盛のイメージが強いが、1蔵だけ「日本酒」を製造。なぜか泡盛っぽい味がする。

ヨイショに使える情報源

上に挙げたネタはあくまで一例なので、最後に、ご当地や出身地のヨイショに使うために必要な情報の探し方をお教えしましょう。

注目すべきは、地域の情報を取り上げているタウン誌やコミュニティー誌など「地域の話題を取り上げる雑誌」です。地域で流行っているお店や、地域で話題のニュースなどが掲載されているはずです。現地の書店で手に取ることができます。

タウン誌やコミュニティー誌の取材能力・企画力は侮れません。今では関東でもすっかり定着した感のある“讃岐うどん”は香川のコミュニティー紙の企画が発信源となって、一大ブームを巻き起こしました。さらに、2015年あたりから注目を集めはじめた”ランチパスポート”のビジネスモデルも高知県の小さな出版社が編み出したものです。地域に密着したメディアに目を向ければ、今、現地の人にどんなことが喜ばれるか理解できるのです。

地域に密着したメディアという意味では、「地方の新聞」も有力な情報源です。地域の流行やイケてるお店は載っていませんが、地元行政の施策や重大事故など、法人顧客向けの話題をキャッチするには最適です。ただし、地方の新聞といっても、情報をカバーする範囲によって、複数の県に渡って発行している「ブロック紙」、1つの県を中心に発行する「県紙」、県の一部をカバーする「地域紙」などの種類に分かれます。発行エリアが広くなるほど、地域への密着度は低くなりますが、逆に県全体の情報は充実します。ヨイショしたい相手に合わせて情報源をかえましょう。県紙なら、広すぎず狭すぎず、適度なバランスの情報を得られると思います。

ちなみに、タウン誌やコミュニティー誌、地方新聞は、現地でなければ手に入れづらいのも事実です。そんなときは、各都道府県の新聞社が自社のニュースを発信しているニュースサイト「47news」を使うと、ミクロな地域情報も手に入れることができます。

まとめ

ここまで読んで「ご当地別にヨイショするの、準備めんどくせぇなぁ」と思った人もいるかも知れません。でも、ほとんどは客観的な知識を覚えるだけ。一度ネタさえ覚えてしまえば長く使えるのが、ご当地別のヨイショの特長です。人間関係構築のきっかけはご当地ヨイショでサクッと定型的に処理して、異動先・転勤先の業務に慣れることに集中しちゃいましょう。

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