『アナと雪の女王』で考える住宅ローン。うつ病でも新築マンションを買える?

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illustrated by Shuko Kudo

映画 『アナと雪の女王』はみなさんご存知ですね?

氷の魔法の力を持つ女王・エルサは、魔法の力をうまくコントロールできず、ふさぎこみがちがち。実の妹ともコミュニケーションをとらずに部屋に引きこもります。
ある日、エルサは国を飛び出し、自らの魔法で作った氷の城に逃げ込みます。エルサは今までの窮屈な環境を抜けだして、自由気ままに……改め「ありのままに」生きられる新生活をスタートさせます――――。

かつて幼い頃に思わぬアクシデントによりアナにケガをさせてしまったエルサは、一切のコミュニケーションを断絶して部屋に閉じこもっていました。
アナの声にもほとんど応じません。

扉に背中を向けて座り込み、暗い部屋でポツリと膝を抱えるエルサ。画面はそんな彼女の姿を引きのショットで捉え、エルサの部屋は殺風景で全体的に重く暗い。もう何もしたくないとでも言うかのような無機質な日常が映し出されます。
少し強引かもしれませんが、この設定は「うつ病」などの精神的な疾患とも解釈できますよね。

つまりこの映画は「うつ病の人が新築でマンションに住み替えた」と考えても良いのでは?と考えても良いですよね?

さて。もしもエルサがディズニーのスクリーンを飛び越えて現実に存在していたら?もしそうならエルサは魔法が使えません。魔法が使えないなら、お城を建てることができませんよね。

けれども、ファンタジーではない現実世界でも住む場所は必要です。はやく新しく住む場所が欲しい!という欲求を叶えてくれる「魔法」のような仕組み――それが住宅ローンです。

これでひと安心。住宅ローンという魔法でエルサは現実世界でも気楽に新しい生活を送ることができるわけです。しかし、ここには大きな落とし穴があります。うつ病の経験を持つ彼女に住宅ローンの融資を受けるのはかなり難しいかもしれないからです。

この記事では「どうしてうつ病の人は住宅ローンを組むことが難しいのか」という課題を明らかにして、またそうした場合はどうすれば良いか?という解決策を紹介していきます。

住宅ローンに入る前に、まず「団体信用保険」?

住宅ローンを借り入れるときには、団体信用生命保険(団信)に加入しなければいけないことがほとんど。団信とは、住宅ローン加入者限定の生命保険のこと。大抵の場合はこの保険に入らないと住宅ローンの融資を受けられません。まずはこの団信について説明していきます。

団信は、ローンの融資を受けたあなたの身に病気やケガ・死亡など万が一のことがあった場合に住宅ローンを保証してくれる保険です。これは病気やケガで働くことができなくなって月々の返済が厳しくなったときには助けてくれるもの。
死亡や高度の障害状態になって働けなくなってしまった場合の支払いのサポートをしてくれます。

毎月の支払いを負担してくれるもの、残高をあなたの代わりに精算してくれるもの、など支払いの方法はその保険によってさまざま。最近では死亡や高度の障害だけでなく、以前まで適応外だった「がん」や「脳卒中」などの病気になってしまった際にもバックアップしてくれる特約も用意されています。
万が一の場合にも自分やご家族に負担をかけないで済みますね。

住宅ローンの返済が難しくなると、競売や売却などの方法でせっかくのマイホームを手放さなくてならない状況に陥ることもあります。そうした苦しい状況を回避してくれるのが、この「団信」です。

ただ、そういった場合には金融機関も損をしてしまうので、銀行などは大抵この団信の加入をわたしたちに義務付けています。わたしたちのための保険だけではなく、金融機関のための保険でもあるわけですね。こうした理由で住宅ローンの借り入れには、まず団信の加入が最初のステップになるわけです。

そういえばアナとエルサの両親は冒頭に船の難破事故で亡くなってしまいましたが、お城はそのまま姉妹にそのまま残されていますよね。きっと両親も団信に入っていたのでしょう。

団体信用保険には健康状態の告知が必要!

住宅ローンに加入する前に加入しなければいけない団信は、健康状態の審査が必要です。心筋梗塞や狭心症、糖尿病やがんの罹患歴があれば告知しなければいけません。

「3ヶ月以内に医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか」
「過去3年位内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上に渡り医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか」

といった具合です。「下記の病気」には

・狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症、不整脈、その他心臓病
・脳卒中(脳出血。脳こうそく、くも膜下出血)、脳動脈硬化症、その他脳の病気
・精神病、うつ病、神経症、てんかん、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症
・ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症
・胃かいよう、十二指腸かいよう、かいよう性大腸炎、すい臓炎、クローン病
・肝炎、肝硬変、肝機能障害
・腎炎、ネフローゼ、人不全
・緑内障、網膜の病気、角膜の病気
・がん、肉腫、白血病、しゅよう、ポリープ
・糖尿病、リウマチ、こうげん病、貧血症、紫斑病
・子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣のう腫

などが該当することが多いです。これらの病気などで「3カ月以内」「3年以内」に医師の治療や投薬を受けたことがあれば書面で申告しないといけません。

ですので、うつ病を患っているエルサはかなり審査に不利になるんです。「どうしても新築マンションを手に入れたい!」という気持ちはわかりますが、くれぐれも嘘の申告はしないように。この告知は義務ですので、嘘だけはついてはいけません。正直に告知しなかった場合、あとでローンの一括返済を求められることもあります。
あくまでも「ありのまま」で。

じゃあどうすれば良いのか?その打開策を次の項からお伝えします。

団信に通りやすくする方法

さきほど挙げたような団信の健康状態の審査の項目には「投薬を受けたことがありましたか?」「通院歴がありますか?」というような質問事項があります。ただし、これらの質問事項の頭には通例、「3カ月以内に医師の診断を~」や「3年以内に医師の診断を~」という限定条件がつきます。この期間の条件が決め手。

つまり、それより以前の病歴については開示しなくてもOKなんです。エルサの場合ですと、ずっと塞ぎ込んでいたのでメンタル面での疾患の項目にひっかかってしまいそうです。しかし、映画の中でうつ病でお医者さんにかかっているシーンはありませんでした。身体は健康そうなので、もしかすると審査に通るかもしれません。

このように、期間外のことに関しては告知する必要はありません。その場合は通院歴や投薬歴を黙っていても審査の不利になることはありません。通院歴などがあったとしても、それだけで絶対に審査が下りないというわけではありません。現在の健康状態や過去の治療期間、投薬の種類などから全体的に評価します。
必ずしもうつだから(だったから)といって団信に加入できないというわけではないのです。

しかし、それでも団信の審査に通らなかった!という場合の対策を考えてみましょう。

団体信用保険がダメなら「フラット35」

団体信用保険に加入しなくても、新築マンションのためのローンに加入する方法は決してゼロではありません。「フラット35」というものがあります!これについて少し解説していきます。

フラット35って?

「フラット35」とは、独立行政法人の住宅支援機構と各金融機関が提携して運営する金融サービス。実は、このフラット35だと団信の加入は任意。通院歴や既往歴などがあり健康状態が不安定な方でも利用できるのがポイントです。

実は、フラット35、それ以外にも、エルサにぴったりな点があります。

というのも、フラット35は連帯保証人も不要です。単身で城を飛び出してオラフ以外に身寄りがないエルサにもぴったりの保険ですね。また、勤続年数が少なくても借り入れすることができます。1年未満でも審査に通ることがあります。
女王になって1日足らずで職場(?)を離れて、雪の女王に転職してしまったエルサには朗報です。

フラット35には他にもこんなメリットが!

正社員だけでなく契約社員や事業主でも審査が通りやすいのも特徴です。当然、王女様にも優しい保険に違いありません。

また、金利が一定というのもポイント。健康状態などに不安がなく問題なく一般的な住宅ローンを組めるという方でも、「変動金利が不安だ」という理由からこのフラット35を選ぶ方もいらっしゃいますよ。

おわりに

日本の15人に1人が生涯のうちに1度はうつ病にかかると言われています。〈注1〉しかも、うつはどんな性格の方でもかかってしまう可能性があるとも言われています。

〈注1〉うつ病|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html (2018/5/24確認)

うつ病をはじめ健康状態の大きな不安要素を抱えている場合は、通常の住宅ローンの融資を受けるために必要な団信に加入できない可能性が高いです。つまり、うつ病であれば住宅ローンを借り入れの実現率は低め。ただし、団信の加入が必須ではない「フラット35」に加入することで、うつ病やその他の病気があってもマイホームや新築マンションを手に入れることができるかもしれません。

アナもエルサも王族なのでローンとか必要ないのでは?というのはご愛嬌ということで……。

この記事を書いたライター

川合裕之
https://linktr.ee/plastic_pocky

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